FROM 12・31 TO12・31 ~青木真也と川尻達也が見せた誇り~
(2009年1月14日 10:10)
"勇気のチカラ2008"と題された「Dynamete!!」。さいたまスーパーアリーナには当日2万5634人の観衆が詰め掛けた。
最後の大晦日決戦?
正直に告白しよう。
2008年12月31日、わたしは複雑な心境でさいたまスーパーアリーナに向っていた。
もはや大晦日に格闘技をやる必要はない――。
そんな危機感を抱いていたのだ。
12・31が迫るにつれて、その気持ちは大きくなっていた。
PRIDEが唯一実現できなかったカードが「Dynamite!!」で組まれた。
桜庭和志対田村潔司の宿命の一戦を見届けた先に何を見出せばいいのだろう。
心配の種はほかにもある。
魔裟斗、山本"KID"徳郁、秋山成勲といった世間の関心を集められる人気ファイターは、
一年に一度のお祭りであるにも関わらずそろって欠場した。
テレビ視聴率戦争の切り札を欠いた主催者は苦し紛れの対戦カードを次々と発表した。
そして最後の爆弾が、バダ・ハリの投入だった。
K-1 GP決勝戦での反則行為で重い処分を下された者が1ヵ月も経たずに再起してしまう。
そんな報道にうんざりし、もはや大晦日に格闘技をやる必要はない、と思ったのだ。
それでも、わたしはさいたまスーパーアリーナの入場ゲートを潜った。
いつか見た光景が飛び込んできた。
会場に足を踏み入れると、そこには「熱」があったのだ。
DREAMの会場では感じられなかった暖かさが充満していた。
リング上の闘いに注がれる視線ばかりではない。
選手入場前に流される"煽りV"と呼ばれる選手紹介VTRに対する反応や
イベント全体を楽しもうとする観客の真摯な姿勢が会場の室内温度を高めているようだった。
わたしの不安は少しばかり和らいだ。
そして、ファンの「熱」はファイターにも伝播していった。
ファンの温もりと選手の熱
初体験のK-1ルールでの闘いを受け入れた総合格闘家の川尻達也は、
ゴングと同時にキックボクサーの武田幸三に立ち向かっていった。
川尻は、戦前こう語っていた。
「覚悟を決めてやるしかないですよ。
大晦日は格闘技にとって特別な日ですし、年間を通して一番のビッグイベントです。
お茶の間で見てる人って、K-1と総合の違いってわからないじゃないですか」
宣言通り川尻は、がむしゃらにラッシュした。
右のフックで最初のダウンを奪うと、続けて今度は豪快な飛びヒザ蹴りで武田をマットに這わせた。
最後は左フックで3度目のダウンを奪い、超合筋ファイターを沈めた。
戦慄のKO劇に、PRIDE時代のような一体感が会場を包み込んだ。
08年大晦日にTBS系列で放送された「Dynamete!!」の視聴率は12・9%と過去最低に終わった。桜庭対田村という、最後の札を切った先には...。
青木真也も続いた。
苦戦が予想されたエディ・アルバレス戦で
開始早々、見事な一本勝ちを決めると、再びさいたまスーパーアリーナが爆発した。
25,634人の観客は、スタンディングオベーションで青木の勝利を称えた。
メインイベントで組まれた桜庭対田村が消化不良の内容に終わった一方で、
ふたりの快勝は、より一層輝いて見えた。
子どものように無邪気に喜びを表現する川尻と青木を見ながら、
大晦日も悪くはないなと、この「熱」を止めてはならないと思い直した。
しかし問題点があったことも付け加えておきたい。
全17試合、7時間というロングラン興行は、会場にいる観客ばかりではなく、
テレビ観戦をしている視聴者にとっても最善とはいえないだろう。
「たくさん試合がありすぎて、誰が活躍したか忘れてしまった」という声をわたしは、とある場所で耳にした。
NHK紅白歌合戦や他局の目玉番組に対抗するために、かつての人気選手を出場させることは仕方がない。
しかし、選手やファンの「熱」をダイレクトに伝えるのがベストであるならば、
試合数を減らし、2時間ほどの枠でテレビ視聴者に届けるべきではないだろうか。
7年間も続いた大晦日格闘技を今後も存続させていくためには、もっともっと危機感を持たなければならない。
ビッグネームのいない大晦日の夜に、ふたりの格闘家はマイクで叫んだ。
「2009年は、DREAMライト級のベルトをとって、僕が盛り上げていきたい」と30歳の川尻が宣言すると、
25歳の青木は「2009年も"DREAMの大黒柱"青木真也、精一杯頑張っていきます」と絶叫した。
いつまでも"アラフォー世代"の桜庭などに頼ってばかりはいられない。
DREAMの舞台が基盤となり、次の世代が牽引していかなければ日本の格闘技界に未来はない。
そんな危機感が彼らを突き動かしている。
青木と川尻の覚悟を目撃し、目覚めた。
もう一度、告白しよう。
2009年12月31日、わたしはさいたまスーパーアリーナに必ず向うだろう。
(終)
WRITER
- 尾崎将司
- あのジャンボ尾崎と正真正銘の同姓同名。 幼少期から多くのスポーツ観戦を体験し、中学1年時には、ひとりで後楽園ホールに足を運んだ格闘技通。スポーツとともに愛する旅は、中田英寿より前に自分探しの旅に出かけ、ヨーロッパ各地を転々とし、アジア、アフリカ、南米各国なども歩き回る。 現在は、毎年フルマラソンに挑戦中の“走るスポーツライター”。
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