『レブロン・ジェームス 「選ばれし者」から「史上最高の男」へ』
(2008年12月24日 18:30)
NBA、FA史上最大の日
「2010年7月1日はNBAのFA史上最大の日となる。多くのチームがこの日に向けて体勢を整えて来るのだろう」
2008年11月25日---。マジソンスクウェア・ガーデンで行なわれたニューヨーク・ニックス戦の試合前、クリーブランド・キャブスのレブロン・ジェームスは爽やかな笑顔を浮かべてそう語った。
それは決して大げさ過ぎる言葉ではない。「2010年、夏」にレブロンとキャブスの契約は満了する。独力でどんなフランチャイズをも一変させるであろう現役最高のスーパースターは、そこで晴れてFAの権利を得るのだ。
「まだ1年半以上も先の話ではないか」などと思うなかれ。その日に向けてニックスは早くも今年11月中に2人のスター選手を放出し、今季の戦いを投げ捨ててまでサラリーキャップに空きを作った。
加えてニュージャージー・ネッツ、シカゴ・ブルズ、ダラス・マーベリックスら有力チームもレブロン強奪を虎視眈々と狙っていると噂される。さらにデトロイト・ピストンズが今季開幕直後にアレン・アイバーソンを獲得したトレードの真の目的も、実はアイバーソンの「実力」ではなく、「今季限りで切れる契約」の方だったと関係者の間では囁かれている。
このように、現在のNBAでは多くのチームがサラリーキャップに空きを作る方向で動いている。すべては1年半後に「キング・ジェームス」を手に入れるチャンスを得るため。例えこれからの2シーズンでプレーオフ進出のチャンスがなくなろうとも、それだけの価値はある。レブロン1人を獲得すれば、彼の在籍期間中はチームの成功が約束されるのだから。
ジョーダンを超える日も近い。キング・オブ・アスリート、そして伝説になるか。
ジョーダンに最も近い男
レブロン・ジェームスは、1984年12月30日生まれの24歳。日本での知名度はまだジョーダンやアイバーソン、コービー・ブライアントには及ばないのかもしれない。しかし本場アメリカでの評価は現時点でコービーを凌駕し、少しずつジョーダンに近づき始めていると言って良い。
その能力はまさに無限大である。ポイントガードの「パスセンス」、シューティングガードの「切れ味」、スモールフォワードの「多彩さ」、パワーフォワードの「強さ」を備えた万能戦士。得点、アシスト、リバウンドのすべてがチームハイという試合も多く、まさにポジションという概念を超越した存在だ。
キャリア4年目の06~07年シーズンには22歳にしてキャブスをファイナルにまで押し上げた。昨季には初の得点王に輝き、今夏の北京五輪ではアメリカ代表でも絶対の中心となって金メダル獲得。ちょうどその頃から、前述通りレブロンをジョーダンと比較する声が徐々に増え始めて来た。
「レブロンはジョーダンのサイズが大きくなったヴァージョンのようなプレーを展開している。本当に恐ろしいことだ」
(イアン・トムセン 「スポーツ・イライストレイテッド」誌)
「いつしかレブロンはジョーダンを乗り越え、「史上最高の選手」と呼ばれるようになるかもしれない」
(ラス・ベンソン 「SLAM」誌)
こういった賞讃の数々は、現時点ではまだ少々時期尚早にも思える。
レブロンはシーズンMVPすらまだ獲得したことがないし、なにより肝心のファイナル制覇を一度も成し遂げていない。
NBA史上最高のスターであるジョーダンは、6個ものチャンピオンリングを勝ち取っているのだ。そんな「伝説」と同列に語るのは、最低でもレブロンがタイトルを1度は獲得するまで待たなければならないのではないか。
WRITER
- 杉浦大介
- 1975年生、東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、NFL、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボールマガジン』『ボクシング・マガジン』『スポーツナビ』『日本経済新聞』など、多数の媒体に記事、コラムを寄稿している。
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