短期集中連載『遙かなるクーパースタウン』 (上)
(2008年12月10日 18:10)
近くて遠い野球発祥の地
野球発祥の地・クーパースタウンに行きたいと思ったのは、10年以上前のことである。
2003年、松井秀喜がヤンキースに入団し、1年に数回ニューヨークに行く機会に恵まれ、これまでトータルで30回以上も渡米したが、念願のクーパースタウン行きは果たせなかった。
行けそうで行けない遙かなる地。クーパースタウンは、まるでフランツ・カフカの小説「城」のようであった。
理由は足の便が悪いことだった。クーパースタウンは、マンハッタンの北西約230マイル(約370キロ)。東京・名古屋間の距離に等しい。鉄道はなく、飛行場からも遠かった。
手軽な方法として、マンハッタンから週2回、早朝に出て深夜に帰るツアーがあったが、350ドルと高価なうえに、現地滞在時間が1時間か2時間。それでは、行ったという自己満足しか得られなかった。
レンタカーを飛ばせば、5時間以内で行けるはずだったが、恥ずかしいことに、免許はあっても30年も運転したことがない筋金入りのペーパードライバーだった。
午前7時マンハッタン発
今回、2泊3日のクーパースタウン行きが実現したのは、ひとえにメジャーリーグがシーズンオフだったからである。クーパースタウンに向かう長距離バスの時刻表を見て、往復98・50ドルのチケットを買った。
マンハッタンからクーパースタウンに向かうバスは、1日2便。午前7時発と午後0時半発。後者は現地到着が午後5時53分。めざす野球殿堂は午後5時にクローズするため、午前7時発のバスに乗らなければならなかった。
郊外に宿を取っていたせいで、午前4時に起き、5時の始発バスに乗り、地下鉄に乗り換え、42丁目のポート・オーソリティ・バスターミナル駅に6時15分に着いた。
バスは定刻に発車したが、夜明けのマンハッタンは、すでに渋滞が始まっていた。マンハッタンとニュージャージーを結ぶリンカーントンネルを抜け、87号線に入ると、ひたすら北上した。私が座った席は、運転手の隣の最前列。バスは枯木立の中を時速80キロでぶっ飛ばし、キングストンに午前9時5分に着いた。
キングストンは18世紀、ニューヨークの州都だったところ。直行便はなく、ここで、クーパースタウンを経由してウチカに向かうバスに乗り換えねばならなかった。
WRITER
- 松下茂典
- ノンフィクションライター。石川県金沢市出身。明治大学卒。主な著書に『松井秀喜・55の言葉』(東京書籍)、『神様が創った試合』(ベースボール・マガジン社)などがある。
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