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『スポーツ余話 言葉の持つ力』

アスリートバンク サイト管理者 (2008年12月10日 17:51)

『スポーツ余話 言葉の持つ力』プロのアスリートにとって年棒が最大の励みだが、たったひと言のアドバイスや言葉が大きな転機になることもある。

高下在心

〝ノリ〟こと中村紀洋内野手(35)がフリーエージェントの権利を行使して、2年間在籍した中日から楽天への移籍が決まった。

交渉の過程で、野村克也監督は、直筆で書いた色紙をプレゼントした。見事な書体で「高下在心(こうげざいしん)」と書かれてあった。野村監督によれば、「すべての物事が成るか否かは心掛け次第で決まる」という意味。新天地に中村を招いた同監督は「自分の好きな言葉だし、今の彼にぴったりだと思う」とも話した。

ペンは剣より強しではないが、言葉の持つ意味が、時に金銭などの条件を上回ることがある。中日落合監督の言葉も心に響いた。「(中村紀は)楽天に行って野球人生をまっとうすればいい。彼に卒業証書を渡したと考えればいい」と快く送り出した。このコメントも見事だったが、受け入れる側の野村監督の贈る言葉は、激動の野球人生を送ってきた中村紀の心境を見透かしたかのような、四文字の言葉だった。

野村ノート

沈思黙考タイプ。ゆったりとしたリズムで、その口調は独特。時に、辛口の内容から「野村のぼやき」と揶揄されたりもするが、含蓄ある言葉の数々は、ノムラ語録として野球ファンを楽しませてくれている。かくゆう私も、何度、辞書を引っ張り出してきた調べたことか。野球界といえば、豪放磊落(らいらく)のイメージを持たれるだろうが、実はグラウンドで学ぶことも数え切れないほどある。特に野村監督が放つ言葉は、スターダストのごとく光を放っている。
野村ノートと呼ばれるものがある。ヤクルト時代に選手として指導を受けた広沢克実氏(前阪神コーチ)から聞いた話を思い出した。現役時代はもちろんのこと、引退して解説者や指導者になってからも、このノートを大事に扱っている。野球人にとって、バイブルのような存在だと広沢氏から聞いたことがある。
当時はどんな様子だったのかというと、2月の春季キャンプ中はもちろん、4月以降のシーズン中もミーティングが毎日のように行なわれ、野球理論を理路整然と説明する野村監督の言葉をノートにメモする日々だったそうだ。気がつくと、メモがぎっしりと書き込まれた大学ノートは何冊にも増えていた。
まるで先生と生徒のような関係だが、野村監督の指導には、子に接する親心のようなハートを感じる。自らを月見草とたとえるように、強者に立ち向かう弱者の思考、論理が野村克也という人間に摺り込まれているのかもしれない。

WRITER

田誠
大阪府出身。岡山大学出身、45歳。日刊スポーツでプロ野球、大リーグ、五輪、サッカー日本代表などを担当。森西武、長嶋巨人、岡田マリノス、ジーコジャパン、イチローのデビューを取材。今年は五輪開催地の北京にも足を運んだ。

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