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短期集中連載 第2回 『だからオリンピックはやめられない フィギュアに見たコーチの存在』

アスリートバンク サイト管理者 (2008年12月10日 17:41)

コーチの存在

スポーツにおいて、コーチの存在は欠かせないものだと思う。
たぶんそれは、自己客観視の難しさにある。自分自身では調子よさそうに感じられても、実はフォームに狂いが生じているときがある。
知らず知らずにコンディションに問題が生じていることもある。練習の加減、そしてどのような練習メニューを組めば適切な効果が得られるかといった要素もある。
さらに、試合に挑むにあたっての過度の緊張をときほぐし、集中していくか。メンタルの持ち方も大切だ。

これらのどれもが、自分自身ですべてを行なうには困難なことばかりである。そこには客観的な視線が必要となってくるのだ。
だから、もてる力を発揮するには、コーチの存在は欠かせない。北京五輪の競泳背泳ぎで、100mで6位にとどまりながら200mで立て直し、銅メダルを獲得した中村礼子の平井伯昌コーチ。シンクロナイズド・スイミングで中国に史上初のメダルをもたらした井村雅代コーチ。存在感を放ったコーチは少なくなかった。

中野とコーチ佐藤信夫コーチのたったひと言が中野友加里の頭を切り替え、最高のパフォーマンスへと導く。

コーチの言葉力

先日のフィギュアスケートのグランプリ(GP)・シリーズの最終戦、NHK杯もまた、コーチの存在の大きさを浮き彫りにした大会だった。

例えば女子で3位に入った中野友加里。
中野は今大会に臨むにあたり、足首などに痛みをかかえ、万全でない状態にあった。その影響はきっと精神的にも重圧となっていたに違いない。ショート・プログラム(SP)ではジャンプで意外なミスをおかすなど、5位にとどまった。

「プレッシャーで硬くなったせいかもしれません。明日は気持ちを切り替えてやりたいです」
ジャンプがうまくいかなかったことに対し、こうつぶやいた。

翌日のフリー・プログラム。滑り始める直前、中野の表情は前日にも増して強張っていた。すると佐藤信夫コーチが中野の頬を軽くたたいた。
氷上に向かうと、中野は演技を始めた。立ち上がりのダブルアクセルに成功。すると波に乗ったように、ほぼミスのないまま、プログラムを滑り終えた。

結果は3位。表彰台に上がり、GPシリーズの上位6名のみが進出できるグランプリ・ファイナル出場を無事決めることができた。
中野は晴れやかに、こう言った。
「切り替えるとは言ったもののそう簡単には行かなくて、今日も引きずっていました。でも(佐藤)先生から、『練習をさぼっていたわけじゃないから大丈夫』と言っていただいて。(頬を叩かれたのは)顔がこわばっていたので、『笑顔、笑顔』と。今日は満足しています」

SPでの失敗、それをひきずっていたかのようなフリーの直前の表情。そこから立て直すことができたのは、佐藤コーチの言葉の力が大きかった。

WRITER

松原孝臣
1967年、東京都生まれ。早稲田大学を卒業後、フリーライターとして活動。1998年から「Sports Graphic Number」編集部に勤め、今年独立し再びフリーに。夏季・冬季両方の五輪種目を中心に取材活動を行なう。著書に『高齢者は社会資源だ』がある。

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