『メジャーを虜にした岩村明憲』
(2008年11月26日 17:29)
レイズ大躍進の立役者
タンパベイ・レイズの岩村明憲にとって、メジャー2年目の2008年シーズンは実り多きものとなった。1番打者として打率.274、6本塁打、48打点と安定した成績をマーク。二塁手へのコンバートにもスムーズに適応し、新人エバン・ロンゴリア三塁手にメジャーへの扉を開いた。
なにより、過去9年間で最下位8度という弱小球団だったレイズは、今季は一気にワールドシリーズにまで進出。そんな「アメリカン・ドリーム」の成就に、岩村も間違いなく大きな貢献したと言えるだろう。
「岩村が出ればレイズ打線が回転を始めるので、何としても出塁を阻止したい。セカンドの守備も上手いし、良いバッターだ」
ワールドシリーズの最中にはフィリーズのチャーリー・マニエル監督もそう語り、岩村の能力を高く評価していた。それまでレイズの試合など注目する機会などなかったニューヨークの記者仲間からも、今秋には「イワムラというのは良い選手だね。辛抱強く、技術もある。理想的な1番打者の素材だ」などと声をかけられたことが何度かあった。
これまで全米的には無名だった日本が誇るリードオフマンの株は、こうして今年の夏から秋にかけて急上昇していったのである。
チーム一の人気者
そしてフィールド上でのプレーに加えもう1つ――。筆者が最も特筆すべきだと感じたのは、岩村のコミュニケーション技術への評価の高さだった。「日本人らしからぬ」評判の良さだったと言って良い。
これまでの日本人メジャーリーガーは、チームから孤立しているとは言わないまでも、自分だけの空間で過ごしているように思える選手が多かった。たいがいは通訳が張り付き、日本人記者がぴったりと傍に寄り添う。ロッカールームには日本語の新聞や本が山積みにされている。
それが悪いと断定するつもりはまったくない。それぞれの性格、ペースもあるのだろう。
しかし某日本人選手は「チームメートとの食事の誘いなども一切断っている」といったエピソードを小耳に挟んだこともあった。そしてその選手が当時極端な不振に悩んでいたことと、周囲に壁を作るような態度がまったくの無関係には思えなかったのも事実である。
野球は結局はチームでプレーするスポーツなのだから、やはりチームメートたちと良い関係を築いていた方がやり易いに決まっている。そしてそういった点での心配は、岩村明憲にはまったくなかったようなのである。
「アキはアメリカ人メディア相手にでも積極的に英語で会話しようとする。この国の文化を学ぼうという姿勢が見て取れる。そんな彼の態度や話し振りから、メジャーでの日々を楽しんでいるんだなとこちらも感じることができる。笑顔でジョークを飛ばす楽しい男さ。アメリカでの生活に適した性格だと思うよ。だから彼はみんなに好かれているんだ」
タンパベイの地元紙「セント・ピーターズバーグ・タイムス」のマーク・トプキン記者は、筆者に笑顔でそう話してくれたことがあった。また、レイズのチームメートたちに話を聴いても反応は同じである。
WRITER
- 杉浦大介
- 1975年生、東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、NFL、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボールマガジン』『ボクシング・マガジン』『スポーツナビ』『日本経済新聞』など、多数の媒体に記事、コラムを寄稿している。
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