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『リディア・シモンというランナー(後編)』

アスリートバンク サイト管理者 (2008年11月26日 17:03)

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破竹の勢い

 1998年、大阪でのマラソンに続いて、シモンはヨーロッパ選手権でも大きく成長を遂げた。1万m32分台の自己記録を31分33秒まで伸ばし、3位入賞。しかも、当時最高を誇ったアイルランドのソニア・オサリバンにわずか2秒と迫りました。次なるターゲットは、2回目の大阪。距離とスピードをしっかり身につけ、1999年大阪へのスタートを切りました。

大阪3連覇

 1999年、大阪の試合は、貫禄で、見ている方も安心でした。まるで自分の庭を走っているようで、余裕で大阪を制し、翌年へ弾みをつけました。

 徐々に日本も翌年に控えたシドニー五輪をにらんだ強化策もおこなわれ、シモンも心の中で密かに狙いだしました。しかし強く成ればなるで、体の変調もでてきて、足首の痛み、腰などに負担を抱え、とうとう、ルーマニアからマッサージ専門の人間をつれて来ることになりました。金銭的に恵まれてくると、自分の家が欲しくなり、シモンはとうとう、すべての財産をはたいて、ボールダーに家を買ってしまったのです。すべての財産をはたき、口座の残高はほとんど空っぽになりました。

しかしまた、自分の足で稼げばいいと、2000年の大阪で弾みをつけて、シドニーでの金メダルを狙う計画をたてていました。すごいなと思うのは、すべての財産を不動産にかえて、ゼロからのスタートをすることです。これは多分シモン的に、五輪では勝つためのハングリー精神だったのではと思います。おそらく、一旦自分を金銭的に追い込んで五輪に臨もう
としたのではないでしょうか。

 1999年も終わり、シモンの家も整い、大阪に向けて最終調整も終え、大阪はシドニーへの試験的レースとして位置づけました。

 2000年年明け。高まる気持ちを押さえながら、大阪に乗り込みました。五輪の選考レースでもあり、日本選手にとって五輪代表選考を兼ねたレースで、かなり緊張していました。また、回りのシモンを見る目も、殺気を感じるほどでした。レースでは、弘山晴美を先頭に、かなり速いペースで進められ、シモンは、先頭から、かなり遅れをとり、はらはらドキドキです。しかし、練習で筋肉トレーニングやスピード練習がしっかりしできていたので、心配はしていませんでした。そこへシモンの猛追が開始。ゴールの長居競技場が見えてもまだ2人の間に距離があり、万事休すと思った矢先でした。シモンのスピードがさらにアップし、競技場のホームストレッチでとうとう、弘山を抜き去ってしまったのです。42.195kmの最後50mで勝負を決めるなんて......。しかし、のちにこれが五輪でも同じようなシーンが再現されようとは、誰も予測しなかったでしょう。トラックに入ってからのシモンの猛追は、まるで弘山が止まっているかのようで、恐怖で足がすくんだかのようでした。

2時間22分54秒。シモンは自己新で優勝、そして大阪3連覇と、輝かしい成績でシドニーに乗り込むことになりました。

WRITER

岡本英司
1957年9月24日大阪府生まれ。米ワイオミング大学を卒業後、コロラドで理学療法士となる。コロラド大学陸上部コーチを務める一方、91年から世界陸上のレギュラー解説者となり、96年には陸上競技のマネージメント会社を設立。日本人初の国際陸連代理人となる。ルーマニア陸連のアドバイザー兼同国のマラソン選手育成もする。現在、米カリフォルニア州デービスで、世界で一つしかないスタイルのフィットネスジムを経営する傍ら、UCDAVISDで陸上の跳躍コーチ。また、中東カタールのコーチのコーディネートも務める。

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