『右か左か』
(2008年10月27日 15:29)
両投げ投手
リッチモンド・カウンティ・バンク・ボールパーク。ライトフェンス後方には、マンハッタンの素晴らしい景観を望む。
今季38試合中17試合、SOLDOUTを記録した人気スタジアム。
球場のゲート入口にて無料で配布された冊子に目を通す。目的の選手のプロフィール欄に、「Throws:Switch」とある。両投げ投手ということだ。ここニューヨークにあるスタッテン島には、ヤンキース傘下の1A、スタッテンアイランド・ヤンキースの本拠地、リッチモンドカウンティバンク・ボールパークがある。
このチームには今年、全米で話題となった選手が所属している。パット・ベンデディー投手。両投げ。08年ヤンキースからドラフト20巡目で指名を受け入団。1985年6月30日生まれの23歳。
今年6月。米スポーツチャンネルESPNで、全米に中継された映像は日本でも紹介されたので、記憶している方も多いと思う。ここで振り返ってみる。
両投げ対両打ち
パット・ベンデディー投手(23)
08年ドラフト20巡目全体620位指名
それは、ベンデディーのデビュー戦だった。9回裏。初マウンドに登る。2アウトとなり、迎えた対戦打者が右のバッターボックスに入る。それを見たベンデディーは左手にグラブをはめ、右投げの構えに入る。するとそれを見た打者が今度はホームベースをまたぎ、左のバッターボックスに入ってバットを構えた。つまり相手バッターは両打ち。スイッチヒッターだったのだ。ここからはまるでコメディー映画のような展開。さらにそれを見たベンデディーは、グラブを右手に持ち替え、左投げの構え。すると打者もホームベース上を右バッターボックスへと引き返す。繰り返すこと約5分。
業を煮やした、審判と両監督の協議の結果、ピッチャー側に選択権が与えられ、結局右対右の対戦となった。かくして行われた両投げ対両打ちの対決は、ベンデディーが三振に斬って、両投げ投手に軍配が上がった。
抑えのエース
チーム内での役割はクローザー。訪れたゲームでは、序盤から点の取り合いとなる大味なゲーム展開ではあったが、スタッテンアイランド・ヤンキースが3点のリードで終盤を迎える。そして、ブルペンで待機していたベンデディーにベンチから声が掛かった。
日本へ国際FAXを送り、特注で作ってもらったというミズノ社製の両手用グラブ。まずは左手にはめて右投げからキャッチボールを始める。そして器用に右手へグラブをつけかえると、同じ数だけ左腕でもキャッチボール。
キャッチーを座らせ、やはり左右均等に投球練習をこなす。
若干違っているのは投球フォーム。右投げのときは、本格的なオーバーハンドに対し、左投げのときはやや横から、スリークォーターぎみに腕を振る。
ベンデディーは、本来は右利きであるが、父親の指導で3歳から左腕でも投げていたという。
右投げのときは、速球と大きなカーブを武器に持つ本格派であるが、左投げでは、サイドハンドからのスライダーを決め球にする軟投派。二つの顔を巧みに操る。
過去の両投げ投手
メジャーリーグでは、記録上4人の両投げ投手が存在した。その内3人は19世紀の選手であり、1900年以降の両投げ投手は、1995年9月28日。エクスポズ(当時)で1試合のみに登板したグレッグ・ハリスただ一人。このハリス、対戦した打者は2人。共に左腕からの投球だった。
日本プロ野球界の両投げ投手には、1988年~1991年、南海、ダイエー、阪神とプレーした近田豊年がいる。近田は左投げではオーバーハンド、右投げではアンダーハンドという変則ピッチャー。しかし、メジャーのハリス同様、1軍登板は1試合。投げたのは左腕だった。(投球練習でのみ両投げを披露)近田以降、両投げ投手は現れていない。
WRITER
- 小川直樹
- 1972年生まれ。スポーツライター。プロ野球を中心に幅広くスポーツ界の取材を行う。米国4大スポーツにも精通。NFL専門誌「タッチダウンPRO」に寄稿。06年ブログ「仁志敏久取材日記」以来のネット界進出。
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