武豊を超える?! 三浦皇成が熱い
(2008年10月14日 19:51)
並みのルーキーがやってのける芸当ではない。
8月10日の函館2歳Sで、フィフスペトルに騎乗し重賞初勝利を挙げた三浦皇成騎手。
「本当に嬉しいですね」。あどけなさの残る顔に満面の笑みを浮かべるも、彼の騎乗はすでに新人の域を超えるものだった。
武豊騎手の持つ新人の年間最多勝利数を21年ぶりに塗りかえるのも時間の問題だ。(10月12日現在)
この日は、一瞬のミスも許されない、俗に〝電撃の〟と称される1200mのスプリント戦だった。特に函館競馬場の小回りコースでは接触を恐れて外側を回ると致命的なロスになる。馬と柵のわずかに開いた内側を、瞬時の判断でムチを入れ、手綱を力強くしごいて後方から一気に差し切ってみせた。
「気のいいタイプだから、3コーナーでハミを取って行くのは分かっていたんです。焦らず、うまく開いたスペースを上がっていけましたよ。最後は外へ出すか迷ったけど、ロスなく乗りたかったので、思い切って内を突きました」。
馬と会話でもしていたかのように、その気性を正確に把握し、実戦でも臆することなく冷静に対処した。
「馬の能力で勝たせてもらいました」と最後にパートナーへの称賛も忘れない。ルーキーとは思えぬ、歴戦のジョッキーも舌を巻く騎乗と態度に一戦毎に評価は高まるばかりだ。
9月28日。札幌で行われた3歳未勝利戦でも、皇成はまたひと違う芸当を見せてくれた。ゴール前で2頭併せのデッドヒートになった。併せた馬の鞍上は、藤田伸二騎手。藤田騎手と言えば、騎乗技術はもちろんのこと、フェアプレー賞を何度も受賞し、曲ったことが大嫌いなことで知られる日本を代表する騎手である。そんな相手に真っ向勝負を挑み、見事競り勝ったのである。レース直後に審議のランプが点灯したのは、上位2頭が接触したことについてのもの。後にパトロールビデオを見ると、ジョッキー同士も互いに接触し合い、まさに馬上の格闘技を演じていた。ただ、レース後のインタビューでは「最後に併せ馬になったのが良かったですね」と、藤田騎手を相手にした激闘にも笑顔で淡々と振り返っていたのには驚かされた。一歩もひかぬ負けん気の強さは天性のものか。
89年。ハイセイコー以来、スターホース不在できた競馬界に〝怪物〟が誕生した。オグリキャップだ。丁度、バブル経済にも後押しされ、オグリの登場と合わせてターフはまた活気を取り戻した。その年、三浦皇成は、東京都練馬区で生を受けた。
5歳の時、父親に大井競馬場に連れられ、ポニーに体験乗馬した時、血が騒いだという。その後は剣道、体操、トランポリン、水泳、キックボクシングと様々なスポーツを習得したが、すでに競馬騎手という目標を持ち三浦の意思を迷わすことはなかった。剣道は礼儀作法、体操、トランポリンはバランス、水泳は柔軟性とまさに〝心技体〟という競馬騎手にとって必要不可欠なものを身につけた。キックボクシングだけは、「小学校の時に、友達にけんかでボコボコにされたんです。それで見返してやろうと思って習いました。でも、今では仲の良い友達ですよ」とは言うものの、競馬はある意味では格闘技。そこで負けん気の強さが養われたのかもしれない。幼少期からの緻密な計画性が窺い知れ、それが現在の〝スーパールーキー〟と呼ばれる所以なのだろう。
WRITER
- 鈴木亨
- 1972年3月14日、北海道札幌市生まれ。幼少時は札幌競馬場近くの八軒で育ち、競馬に触れる。高校時代はレスリング部に所属。大学入学を機に上京。90年の日本ダービーで、アイネスフウジンの“ナカノコール”に衝撃を受け、本格的に競馬にのめり込む。大学卒業後は海外を放浪。98年、サンケイスポーツにアルバイトとして入社。サンスポ編集部を経て競馬エイトへ。02年、トラックマンデビューしていまに至る。現場では想定班を担当。
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