『選手から監督へ』 金沢イボンヌ
(2008年12月10日 01:10)

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かつてのアスリートはストップウォッチを握るさまも板についてきた。
イボンヌとの出会い
金沢イボンヌを覚えているだろうか?1974年11月19日生まれ。100m11秒53。200m23 秒97。100mハードル13秒00。この記録は、今も、日本記録として残っている。
彼女は、私が以前コーチをしていたコロラド大学の陸上部生徒で、私がイボンヌを日本人と認識したのは彼女が大学2年の時だ。私の元に、400mハードルの日本の第一人者。山崎一彦(現・福岡大陸上部コーチ)が合宿に来ているとき、突然彼女が「私は日本人よ」と、日本語で声をかけてきたことが発端だった。
その時は、まだ英語での会話で、彼女が「日本選手権出れるかな?」と、端的に質問してきた。
私の中で、いったいこの子は何を考えているのか、何を言いたいのかが、すぐに把握できず、まず、彼女に「君が日本人であるなら、パスポートを持ってきなさい。おそらく君は、両親のどちらかが、日本人でも、アメリカ生まれで、アメリカのパスポートしかないと思うよ」と言うと、翌日、彼女は、赤い表紙の日本のパスポートとグリーンカード(永住権証明)を持参してきた。
私は自分の目を疑いかけたが、それは紛れもなく本物だった。彼女の生まれは新宿区で、2歳の時に、アメリカに母と移住したという。
カリフォルニア州サクラメントに移り住み、母の手一つで育てられた。
高校に入るまでは体操をしていたが、体が大きくなり過ぎたことと、腕の骨折もあり、高校から陸上を始める。
1992年、コロラド大学に入学。そして、陸上部に所属するも、なかなか本来の力を発揮出来ぬまま、最初の2年間をやり過ごした。しかし、大学3年の時に、100mハードルで13秒5台を記録。その頃から、陸上に傾倒するようになった。
私に声をかけてきたのは、ちょうどその時期である。
陸連との争い
1995年、彼女を東京陸協所属に登録し、日本選手権に出場させようとした。すると、日本陸連の事務局は「この子は、アメリカ人だ」と、クレームをつけてきた。
根拠を尋ねると、「日本人の顔をしてない、周りが混乱する」と。これは人種差別発言だ。
私の闘志が燃え上がり、ここから陸連との争いが始まった。
当時陸連は、選手へのマネージメント制度の不許可など、世界的にみて後進国だった。
陸連役員はさらに、「彼女が日本選手権を走るなら、パスポート持参で走らせなさい。それが日本人としての証だ」と言い出した。この言い分にはあきれるばかりだった。
どこの世界にパスポートを持って試合会場に行く選手がいるだろうか。しかし、譲らない陸連の人間に対して、こちらは、パスポート持参を了承する代わり、他の選手全員も同じことをするよう提案したが、あえなく拒否。結局、裁判に持ち込むことを提案したことで、一気に収束することとなった。
これは単なる嫌がらせでしかなく、情けない気持ちでいっぱいになった。
そんなことにはお構いなく、彼女は気楽に走って、初の日本選手権で優勝、一躍日本の頂点に立った。
それから、1年間の大学生活を満喫し、1996年、今度は日本選手権兼五輪選考会に臨んだ。緊張度はかなりのものだと思うが、緊張したのは、彼女のマネージャー兼コーチである私で、本人は全く動じず、けろっとした顔で堂々の日本記録で優勝して、アトランタ五輪の切符を手に入れた。
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