『夢はロンドンで金メダル』マラソンランナー・佐伯由香里(前編)
(2008年11月12日 12:13)
(プロフィール)佐伯由香里(さはく ゆかり)
1988年、千葉県栗源町(くりもとちょう 現・香取市)出身。07年、県立佐原高校卒業後、アルゼアスリートクラブへ。同クラブを指導する小出義雄監督の佐倉アスリート倶楽部の下でオリンピックランナーを目指す。08年、第81回関東陸上競技選手権1万メートル優勝。08年、北海道マラソン、2時間31 分50秒で初マラソン初優勝。
![]()
まだあどけなさが残る小さなランナーだが、いったん走り出せば他を寄せ付けない迫力に満ちあふれる。
とにかく小さい。
身長142センチ、体重31キロ。この体のどこにフルマラソンを闘いきる力があるというのか。ちなみに、小学校5年生の平均が140センチに34キロである。
「飛行機に乗ると、おもちゃをくれるんです」
茶目っ気たっぷりに笑顔で答えるが、中身は立派なアスリート。
"大人"に混じってマラソンで優勝しているのだから。そして、はっきりと「目標はロンドンオリンピックで金メダル」と宣言した。
小さくても、長距離走には自信があった。小学校では6年間負けなし。00年、シドニーオリンピックで激走する高橋尚子に佐伯は大きな衝撃を受けた。
「私もいつかあの舞台に立ちたい」
中学はもちろん陸上部で、3年の時、1500メートルで全日本中学選手権に駒を進めたが、健闘むなしく予選敗退。長距離は体格ではないことを証明したが、この結果に納得がいかなかった。
「このままでは終われない」
佐伯は高校でリベンジを誓った。
「私は一つのことしかできないタイプで、それが陸上でした」
高校でのリベンジは早速おとずれた。インターハイに出場し、3000メートルで決勝に進んだ。結果は16位だったが一歩前進だ。駅伝ではハイレベルな千葉県予選で2位。エース区間の一区を任された佐伯は区間賞をとった。だが、所詮、小さな箱の中での闘いと、満足はできなかった。
「もっと高いレベルでやりたい」
あたかも"井の中の蛙"が現状に飽き足らず、大海に旅立とうとせんばかりに、佐伯の陸上に対する思いは熱くなっていった。
![]()
有森裕子、高橋尚子を育てた名伯楽・小出義雄監督の手になる次のメダリストになるか。
「実業団に進もうか......」
だが、両親とも教員で、佐伯本人も小さい時から教員になるのが当り前と思っていただけに、進学か実業団で悩むことになった。
佐伯の背中を押した男がいた。小出義雄だった。世界に通用する有力な若手の発掘に、インターハイに足を運んだ小出は佐伯に目を止めたのである。
「どうだ、実業団でいっしょにやらないか」
あの憧れの高橋尚子を育てた小出義雄からの勧誘である。佐伯の気持ちは大きく揺れ動いた。筑波大進学の選択肢があった。筑波の陸上部のレベルは決して低くはないが、......。
「走れる時に走りたい。大学で4年やるよりもレベルの高い実業団でいち早く走り始めたほうがいいのではないか。とにかく、一刻も早くもっと力をつけたい」
佐伯の気持ちはほとんど決まっていた。とはいうものの、最終的には進学するだろうと、両親は高をくくっていた。
ところが、大学へ願書提出の期限が迫っていた深夜12時。まだ娘の部屋に明かりがついているのを確認した父親は、てっきり受験勉強しているものと様子を伺いに行くと、そこで目にしたのは腹筋運動で汗を流している佐伯だった。
(次号へ続く)
MONTHLY SHOOTING
『実力の坂田』 Home Sweet Home
[08/12/24]
『高陽経由バンクーバー行』 真央のハッピーフライト
[08/12/10]
『メッセンジャー』感謝。そして
[08/11.26]
TOPICS
特集
“新連載”REMEMBER THE ATHLETE 第1回『井手川直樹(マウンテンバイク・ダウンヒル)』 黒井克行[09/01/14] 『やっとつかんだ夢の舞台―拓殖大学、4年ぶりの箱根路(後編)』 矢沢彰吾[09/01/14] 『「悪の帝国」ヤンキースが'09年に本領発揮か?』 杉浦大介[09/01/14]
『女子スキージャンプ 山田いずみ』 松原孝臣[09/01/14] 短期集中連載『遥かなるクーパースタウン(下)』 松下茂典[09/01/14] 『三流騎手が一流調教師になった日』 鈴木 亨[09/01/14]
『スポーツ余話 オシムの言葉力』 田 誠[09/01/14] 『日本人初! NFL選手誕生なるか?(前編)』 岡本英司[09/01/14] 『アメリカ軍大学 ペンか剣か、それともスポーツか』 小川直樹[09/01/14]
『FROM 12・31 TO12・31~青木真也と川尻達也が見せた誇り~』 尾崎将司[09/01/14]
連載コラム
アスリート列伝 凄い奴がいた 第7回『青い稲妻・松本匡史』 石山建一[09/01/14] 六さんの一刀両断! 第7回『上原 甦るかフォーク』 六車 護[09/01/14] 松井ニューヨーク物語 第7回『09年松井のバット、そしてHRへのこだわり』 松下茂典[09/01/14]
勝手にサッカー委員会 第6回『“常勝軍団”鹿島に見る伝統を継承する力』 熊崎 敬[09/01/14] クラシック音楽のアスリートたち 第4回『フィギュア・スケートとクラシック音楽』 富樫鉄火[09/01/14] 指導者の系譜 第3回「フレディ・ローチ 現代最高のトレーナー」 杉浦大介[09/01/14]





![WEB AthleteBank[アスリートバンク]](/images/foot_logo.jpg)