『強い女になる』女子プロボクサー・宮尾綾香(前編)
(2008年10月14日 08:26)
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街を歩く姿はどう見ても"フツーの"女の子である。
それを知らずに助平心丸出しに執拗なナンパをしようものなら、強烈なパンチをお見舞いされる?
9月24日、宮尾(大橋ジム)はプロデビュー戦を4ラウンド判定で飾った。足を使ったアウトボクシングスタイルを信条とし、得意のパンチは右ボディという。元世界チャンピオンの大橋会長は至近距離から電光石火のボディアッパー一発で相手をマットに沈めたのを思い出す。
それにしても、なぜボクシングだったのか?
「女だてらに」と世間の目はまだまだ女子ボクシングへの理解は浅く、だいいちスポーツとはいえ、親は大事な娘を"殴り合い"の場に手放しで送り出すとは思えないのだが......。
「そりゃあもう、親は大反対でしたよ。『一生懸命やります。やるからにはチャンピオンを目指します』って、必死に食い下がりました。結局、『お前は一度こうと決めたらテコでも動かない、何を言ってもきかない子だよ』と。今では応援してくれています」
今後、この親との一歩も引かぬ攻防を、リング上での激しい打ち合いでも期待したい。
「実はボクサーは小さい時からの夢でも、憧れていたボクサーがいたわけでもありません。ただ、学生時代からずっとバスケットをやっていたので体を動 かすのが好きで、ストレス発散と暇つぶしのために短大時代から始めたんです。地元(長野県佐久)のキックボクシングジムに通っていたんですが、あくまでも そこまでのはずでした。ところが、卒業に際し、進路をどうするか? これといったやりたい仕事があったわけではなく、かといってこのまま就職するのもどう か。専門学校へ通って資格を取る道もあるが......」
迷った末、宮尾が選んだのはボクシングへの道だった。
「ジムの会長が『プロを目指して本格的にボクシングに打ち込んでみないか』って、声をかけてくれたんです。その時の私はジムで汗を流していたといっ ても、ボクシングはまったく知らない世界で、だいたい誰が世界チャンピオンかもわからない。その程度の姿勢でボクシングと接していたんです。ただ、『や る』と決心するまでに葛藤はなかったですね。回りから持ち上げられ、それが後押しになって『やってみたい』って気持ちに完全に傾いたんです」
宮尾の腹は決まったが、不安を抱えたままでの出発だった。
99年、日本女子ボクシング協会が結成され、選手も三百人を数え、実際に興行も打たれていたが、当時、まだ日本では女子ボクシングはプロ化されてい なかったのである。アメリカでは93年にボクシング協会が女子のプロボクサーを正式に認定し、あのモハメッド・アリの娘、レイラ・アリが二世ボクサーとし てリングに上がるや人気は沸騰した。またさらに、アリのかつてのライバル、ジョー・フレイザーの娘、ジャッキー・フレイザー・ライトも名乗りを上げ、レイ ラとグローブを交える二世対決は全米中の話題をさらった。
隣りの韓国では今や、ボクシングは女子の方が人気が高く、男子の試合は前座に組まれている。しかし、日本は......。
宮尾はすでに歩み始めていたが、行く手に自分の力ではどうすることもできない壁を感じていた。不安を抱えながらも、ただ、ひたすら無心にサンドバックを打ち続ける日が続いたのだ。
そして、2007年......。
(次号へ続く)
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