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六さんのスポーツ一刀両断!
第5回 バブルが続くプロ球界

 

"銭闘"開始

プロ球界の12月は「カネ」がニュースとなる季節だ。主力選手の契約更改では、億単位はあたりまえ。ドラフト上位新人の入団契約では、契約金1億円、出来高5000万円、年棒1500万円が表向きの申し合わせ相場のようだ。ここ3日間のスポーツ紙をめくってみても次のような見出しが躍っている。いくつかをピックアップして、それぞれへの感想を書きたい。

―(12月2日)「不況知らず ダル 3億円男 5年目史上最高額」

本記はこうある。「日本ハムのダルビッシュ有投手(22)が1日、契約更改交渉に臨み、7000万円、35%アップの年棒2億7000万円プラス出来高でサイン。5年目の選手としては球界史上最高額となり、出来高を加えると総額3億円超えも確実となった。チームでも複数年契約を結んだ稲葉篤紀外野手(36)を抜いてトップ。現時点ではパ・リーグ投手の最高額になった」。

六さんの一刀両断!契約更改は選手の喜怒哀楽のドラマ。今年笑っていても、来年まで笑い続けていられるかわからない。それがプロだ。

― (12月3日)各スポーツ紙は契約更改の記事が目白押しだ。見出しの大きい順に追っていくとトップは西武の石井一久投手(35)。「今シーズンの年棒から3000万円増の2億8000万円でサイン。出来高を除く実質では、日本ハム・ダルビッシュを抜いてパ・リーグ投手最高年棒に躍り出た」。コメントは「もうちょっと野球界に残ったほうがいいかも、こんないい商売はないですから」だと。ついで巨人の内海哲也投手(26)、「3600万円アップの1億2000万円で契約を更改した。入団5年目での大台超えに笑顔を見せた」。なんとも無邪気にクラッカーを打ち鳴らすカット写真が添えてあった。内海の記事の下には同じ巨人、阿部慎之助捕手(29)の更改が続いていて、「3000万円アップの2億7000万円でサインした」とあった。

―(12月4日)「清水 2年の複数年契約で合意」
「ロッテの清水直行投手(33)が2年契約の総額4億6000万円プラス出来高の条件で大筋合意した。清水は今季、国内FA権を取得。行使せずに残留を決めたものの、契約年数などをめぐって残留交渉が難航していた」。この記事には瀬戸山隆三・球団社長のコメントが載っていた。曰く、「(清水は)話せば分かる男。直ちゃんと私は愛し合っています。直ちゃんはミスターロッテ。選手会長として今後もチームをまとめてほしい」。本人はマスコミ受けを狙ったジョークのつもりか、はたまた残留のためのおべんちゃらだろうが、球団トップの任にある社長としての威厳はかけらも感じられない。あまりにもレベルの低い談話に唖然とさせられた。いやはや、日本のプロ球界は、この程度の男が取り仕切っているのかと考えると寒気すら覚えたというのが本音だ。そういえばこの社長にまつわることで、2004年の秋を思い出した。近鉄バッファローズの身売りから球団削減・再編騒動で揺れ、史上初のストに突入したときだ。何ら決着を見い出していない会見で、機構側代表の社長は選手会の古田敦也会長(当時ヤクルト)にニタニタと握手の手を差し延べた。古田はこれを敢然と拒否。すごすごと引き下がった社長の姿は、いまでも記憶に残っている。

プロの値段

僕はかねがね、プロ野球選手は「特殊な高等技能を持つ選ばれた集団」だと思っている。億単位の年棒をもらおうとも、さすがに「プロ中のプロ」だと関係者やファンが納得すればそれでよい。バブル時代のような年棒アップがあっても構わない。ただし、それはみんなが認める何人かに限ってのことである。いま、世界はアメリカのサブプライムローンの破綻を端緒に地球規模の不況に見舞われている。わが国とて、逆風に抗しきれるはずはない。しわ寄せの切っ先は弱者に向けられるのが常で、コスト削減の名のもとに派遣社員や期間従業員はリストラの嵐に塗炭の苦しみを味わっている。こうした世相に多少とも思いが至れば、球団社長の口から"直ちゃんと私は......"などという低俗なセリフが出ることはないはずだ。たとえば、「球団経営は多大な赤字を計上している。世の中は不況の波が打ち寄せている。破格の契約ではあるが、清水は来季の優勝奪回を目指すチームにとって必要不可欠な戦力。ファンの皆さんには納得してもらいたい」ぐらいのコメントが発せられなかったのだろうか。

WRITER

六車護
1945年香川県生まれ。早稲田大学卒業。高校・大学で硬式野球部員。毎日新聞入社。運動部でプロ野球、ボクシング、経済部で通産省、証券、財界などを担当。運動部長、論説委員を経て退職。現在、フリージャーナリスト、早稲田大学講師。著書に『名スカウトはなぜ死んだか』(講談社刊)、『監督論』(広岡達朗氏と共著集英社インターナショナル刊)などがある。

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